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雲と追いかけっこを 1986 パート5 [読み物]

カンカン照りの真夏の日差しの下、内房線がゆったりとしたリズムで南へむかう。

行く手に入道雲がわきたち、ボックス席のふたりの関心を誘った。









■ 前回話  ・雲と追いかけっこを 1986 パート4
http://versatile.blog.so-net.ne.jp/2012-08-06








列車がまるで生き物のように車体をくねらせて海沿いのカーブを行く。

カンカン照りの夏の日。

前方に見えている入道雲がさらに成長し、行き場がなくなった上の方が左右に広がった。

底は暗くて進行方向に立ちふさがる。 このまま行くと追いつくかもしれない。

雲が成長し、そして変化していく様は息を飲む美しさで見ていて飽きる事がなかった。






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そして目の前の彼女。

彼女はどこを見ていて、何を考えていたのだろうか。

長旅だが、疲れた様子も見せず、退屈しているそぶりも見せない。

ボックスシートのひじかけに肘をついて、手のひらにあごをのせて、それがすこし口元をふさいでいてた。

それがリラックスをしていたのか、彼女のお得意のポーズなのかは分からない。

微妙な表情をしていた。

お互いにあいかわらず言葉は少ないけど、存在は気にしている。

でも意識しすぎる事は無い。 そんな不思議な空気が二人を包んでいた。










電車が力行し、スピードを上げていくと雲に追いつきそうな気配。

惰行に入りすこしづつ速度が落ちて行き、そして駅に停車するとすこし離される。

また、発進して雲に追いすがりはじめる。

そして、停車する毎にすこし離される。

いつのまにかぼくの頭の中では雲と追いかけっこになっていた。


次の駅は特急の通過待ちのため長めの停車となり、

雲がややリードして先に行く。






パート5 おしまい






■ 次回話 ・最終回
http://versatile.blog.so-net.ne.jp/2012-08-27


















■ 雲と追いかけっこを 1986 

パート1
https://yasssy.com/story-8601/

パート2
https://yasssy.com/story-8602/

パート3
https://yasssy.com/story-8603/

パート4
https://yasssy.com/story-8604/

最終回
http://versatile.blog.so-net.ne.jp/2012-08-27











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